


豊島区巣鴨駅周辺駐輪場
豊島区が平成12年度に放置自転車対策費用として投下した税金は約12億円。中でも巣鴨は池袋・大塚に次ぐ放置駐輪地帯で、そんな現状を打開すべく、区として駐輪場整備を推進してきた。今回、管理・サービス面をさらに向上すべく「指定管理者制度」を導入。巣鴨駅周辺の3つの区立駐輪場の運営・管理面を民間に委託することを決定した。審査の結果NCDが選ばれ、民間ノウハウを活用した駐輪場として再スタートすることになった。
豊島区は、慢性化した放置駐輪の打開策として、平成14年1月に「放置自転車等対策税」の導入構想を発表した。これは区内に駅を持つ鉄道事業者に対して、駅周辺の放置自転車の撤去費用として一人当たり3千円を課税するというもので、全国の行政自治体や鉄道事業者に大きな波紋を投げかけた。区としては、このような制度の導入を検討するとともに、既設・新設駐輪場の整備を積極的に推進していった。

従来、自治体が所有する施設の管理・運営については「管理委託制度」が適用されており、自治体の出資法人や公共団体などにしか認められていなかった。しかし、平成15年6月の地方自治法改正によって自治体から指定された民間事業者も「指定管理者」として業務を代行できるようになり、区営駐輪施設の管理・運営に関しても、民間がそのノウハウを発揮することが可能になった。これを受け、豊島区はさっそく巣鴨駅周辺の3つの区営駐輪場の指定管理者を公募した。

指定管理者選考には、応募説明会に参加した自転車駐車場関係団体50社のうち、10社が自社プランを提出。単に駐輪システムをその場所に導入するということにとどまらず、巣鴨駅周辺の商店街や商業施設等周辺環境との関連性も考えた街規模での解決型プランが受け入れられ、また、全国での圧倒的な実績がそれを後押ししたこともあり、総合評価によってNCDが指定管理者候補に選ばれた。
エコステーション21の発想のベースに息づいているのが、PPP(Public private partner-ship)方式という考え方。これは“官民協働による施設の設置・運営”を意味する。駐輪問題を解決しようと考えた時、ただ駐輪場を作ればいいかというとそうではない。その場所からは放置自転車がなくなったとしても、街の他の場所に追い出した自転車が移動してしまうというケースも少なくない。つまり、駐輪問題は、街全体の商業施設、鉄道、公有地等も含めたマクロな視点で把握し、解決プランを立てなければ意味が無い。そんな総合コンサルティングという考え方に基づいたプランニング能力がNCDの強みだと言える。

他にも、外部監査機関を置き、セルフモニタリングを行って透明性の高い公正な運営を約束したことや、管理者研修会・利用者アンケート等を実施していくことで、常にサービスの向上に努めるという姿勢も評価された。また、公共の施設ということもあり、高齢者・障害者などの社会的弱者、特殊自転車利用者を、人的、設備的に補助するというサービスを組み込んだり、夜間は常駐警備員を配置するなど、機械システムにマンパワーを融合させることで地域的な安全施設としての役割も意識している。
3つの駐輪場それぞれの場所や状況に応じてシステムや料金体系を変え、綿密にプランを練ったことで設置後は回転率が15%向上。放置自転車対策としての効果が着実に出始めている。

民間による運営の優れた点は、会社側としても運営を成功させなければビジネスとして成り立たないため、必然的にサービスの向上に努めるということ。実際法の改正で指定管理者制度ができたとはいえ、まだ民間企業が指定されているケースは全体の2割程度。多くは社団法人や財団法人が選ばれるという実情の中でこの成功事例は大きい。巣鴨の成功によって豊島区は同区内の別の場所への導入も検討しており、今後の駐輪問題解決に期待をかけている。
